大学への合格が決まり、入学手続きを進める中で「保証人」の欄を見て、誰に頼めばよいのか戸惑う方は少なくありません。「親が定年退職しているけれど大丈夫?」「頼める親戚がいない場合はどうすればいい?」といった不安を抱えるのは、決してあなただけではありません。大学における保証人は、学費の支払いや緊急時の対応を担う重要な存在です。この記事では、大学 保証人の役割や条件、万が一頼める人がいない場合の具体的な解決策まで、専門的な視点からわかりやすく解説します。
大学 保証人とは?知っておきたい基礎知識

大学に入学する際、多くの大学で提出が求められる「保証人(または身元保証人)」という制度。まずはその基本的な定義と、なぜ大学がこのような仕組みを設けているのかを理解しておきましょう。
なぜ大学は保証人を求めるのか
大学が保証人を求める最大の理由は、学生が学費を支払えなくなった際の「債務の担保」と、学生本人に何かあった際の「緊急連絡先」を確保するためです。大学は教育機関であると同時に、運営のために多額の費用を必要とする組織でもあります。
万が一、学生本人が授業料を滞納し、督促にも応じない場合、大学は運営を継続するためにその費用を回収しなければなりません。その際、本人に代わって支払いを約束するのが保証人の役割です。また、学生が事件や事故に巻き込まれたり、精神的なケアが必要になったりした際に、大学側が責任を持って相談できる窓口が必要なのです。
「身元保証人」と「連帯保証人」の違い
大学の書類には「保証人」や「身元保証人」と記されていることが多いですが、法的な性質は「連帯保証人」に近いケースが一般的です。一般的な保証人の場合、まずは本人に請求するように主張する権利がありますが、連帯保証人の場合は、本人の状況に関わらず請求されたら支払う義務が生じます。
2020年の民法改正以降、多くの大学では保証人が負うべき賠償の上限額(極度額)を明示することが義務付けられました。これにより、保証人が際限なく責任を負うリスクは軽減されましたが、依然として重い責任を伴うものであることに変わりはありません。入学手続きの書類を記載する際は、どの程度の責任範囲が含まれているのかを事前に確認しておくことが大切です。
保証人が必要になるタイミング
主に必要となるのは、入学手続きのタイミングです。合格通知を受け取った後、入学金や前期授業料の納付と並行して「誓約書」や「保証書」を提出します。ここでは保証人の氏名、住所、連絡先、そして押印が求められるのが通例です。
また、在学中に保証人が亡くなったり、経済的な事情で役割を果たせなくなったりした場合には、保証人の変更手続きが必要になることもあります。卒業まで継続して責任を負える人物を選ぶことが、スムーズな学生生活の維持に繋がります。
大学の保証人になれる人の条件と資格

「保証人は誰でもなれる」というわけではありません。各大学には独自の規定があり、一定の条件を満たしている必要があります。ここでは、一般的によく見られる保証人の条件を具体的に見ていきましょう。
一般的な要件:親族・年齢・収入
多くの大学では、保証人の条件として以下の3点を挙げています。
- 原則として父母(またはこれに準ずる親族)であること
- 独立した生計を営んでいる成人であること
- 学生本人の学費や諸経費を負担できる経済能力があること
基本的には、父または母が選ばれることが最も多いです。しかし、両親がすでに他界している場合や、経済的な理由で困難な場合は、おじ・おば、あるいは兄弟姉妹(成人して働いている場合)が認められることもあります。
安定した収入が求められる理由
保証人の大きな役割は「学費の肩代わり」です。そのため、無職の方や学生、あるいは収入が極端に不安定な方は、保証人として認められないケースがあります。大学側は「この人がいれば、もしもの時に学費を回収できる」という安心感を求めています。
ただし、年金受給者であっても、一定の収入があり生活が安定していれば認められる大学が多いです。定年退職後の親を保証人に立てる場合は、事前に大学の募集要項や入学案内を確認しておくか、事務局に相談してみるのが確実です。
祖父母や兄弟、親戚に依頼する場合の注意点
両親以外に依頼する場合、大学によっては「二親等以内の親族に限る」といった制限を設けていることがあります。二親等とは、父母、祖父母、兄弟姉妹までを指します。おじ・おばは三親等になるため、大学によっては追加の理由書が必要になることもあります。
また、遠方に住んでいる親戚に依頼する場合、緊急時の連絡がつくかどうかも重要視されます。書類のやり取りだけでなく、学生本人に何かあった際に駆けつけられる距離感であるか、あるいは電話等で確実に対応できるかを確認しておきましょう。
居住地に関する制限
一部の大学、特に公立大学や地方の私立大学では「本人または保証人が県内に居住していること」といった条件が付されることがあります。これは地域の税金で運営されている背景や、緊急時の対応スピードを重視しているためです。
もし親が遠方に住んでいて条件を満たさない場合は、「身元引受人(近隣に住む親戚など)」と「保証人(遠方の親)」を分けて設定することを求められる場合もあります。募集要項の「保証人」の項目を細かくチェックすることが不可欠です。
保証人の法的責任とリスクを正しく理解する

保証人を引き受けるということは、単に書類に名前を書くだけの行為ではありません。法的な義務が発生することを、依頼する側も引き受ける側も正しく理解しておく必要があります。
学費滞納時の支払い義務
最も大きなリスクは、学生が学費を滞納した際の支払い義務です。大学側は、学生本人に支払いの意思や能力がないと判断した場合、即座に保証人に対して請求を行います。このとき、保証人は「まずは本人に言ってくれ」と断ることは法的に難しいのが実情です。
大学の学費は年間で100万円を超えることも珍しくありません。滞納が数期分に及べば、保証人が背負う金額は非常に大きくなります。親に頼む場合は家族間の問題で済みますが、親戚などに頼む場合は、この金銭的リスクを十分に説明し、納得してもらう必要があります。
緊急連絡先および指導監督の責任
金銭面以外にも、学生が大学内でトラブルを起こした際や、成績不振で退学の危機に陥った際、大学は保証人に連絡を入れます。「学生本人の生活態度を指導してください」という役割も含まれているのです。
例えば、学生が大学の備品を壊してしまった場合や、研究活動で他者に損害を与えた場合、その賠償責任を保証人が負うケースもあります。また、不登校が続いて単位が危うい時に、大学側から「今後の通学の意思」を確認されるのも保証人です。
2020年民法改正による「極度額」の影響
2020年4月の民法改正により、個人が保証人になる際には「極度額(保証する金額の上限)」を書面で合意しなければ、保証契約が無効となることになりました。これを受けて、現在の大学の保証書には「○○○万円を限度とする」といった記載が含まれています。
この改正は、保証人が予期せぬ巨額の負債を抱えるのを防ぐためのものです。依頼する際は「この金額までの責任を負ってもらうことになる」という具体的な数字を提示できるようになったため、以前よりは説明の透明性が高まったと言えるでしょう。
保証人の責任を軽減するために
学生本人ができる最大の配慮は、誠実に学業に励み、学費の支払い状況を透明化することです。奨学金を活用している場合は、その振込状況や返済計画を保証人に共有しておくことで、相手の不安を払拭できます。信頼関係があってこその保証人制度であることを忘れてはいけません。
保証人がいない・頼めない場合の4つの対処法

「親が高齢で収入がない」「親戚との付き合いが途絶えている」「親が保証人になることを拒否している」など、保証人を立てられない事情は人それぞれです。しかし、保証人がいないからといって大学進学を諦める必要はありません。現在では、いくつかの代替手段が用意されています。
1. 「機関保証」制度の利用
最も一般的で推奨される方法が、日本学生支援機構(JASSO)などの「機関保証」を利用することです。これは、特定の保証機関(公益財団法人日本国際教育支援協会など)に対して一定の保証料を支払うことで、機関が保証人の役割を果たしてくれる制度です。
機関保証を利用すれば、親戚に頭を下げて保証人になってもらう必要がありません。ただし、毎月の奨学金から保証料が差し引かれるため、実際に受け取れる金額が少し減るというデメリットがあります。それでも、人間関係のトラブルを避けたい場合や、身近に頼れる人がいない場合には非常に有効な選択肢です。
2. 民間の「保証代行サービス」の活用
近年、大学と提携した民間の保証会社が、保証人の代行サービスを提供しているケースが増えています。主に学費の支払いに特化した保証を行うもので、大学が指定する会社を利用するのが一般的です。
このサービスを利用する場合、審査が行われます。審査に通れば、年間数千円から数万円の保証料を支払うことで、保証人を立てずに手続きを進めることが可能です。自分の志望する大学が、民間保証会社との提携を行っているかどうか、入学課に問い合わせてみましょう。
3. 大学独自の特例措置や免除制度の確認
家庭の事情(生活保護受給、ひとり親家庭など)により保証人を立てることが極めて困難な場合、大学によっては特例として保証人の免除や、別の形態での誓約を認めてくれることがあります。
例えば、学生本人が成人しており、安定した職に就いている(社会人学生など)場合は、保証人を不要とする大学も存在します。また、保証人の代わりに、信頼できる知人の署名と、本人の預金残高証明書の提出などで代替できるケースもあります。まずは、隠さずに大学の事務局へ事情を説明し、相談することが解決への近道です。
4. 知人や遠縁の親戚に依頼する際の注意点
どうしても個人に頼らなければならない場合、知人や恩師、あるいは疎遠だった親戚に依頼することになります。この際、口頭だけでお願いするのではなく、以下の情報を整理して提示しましょう。
- 大学の名称と学部学科
- 4年間(または6年間)の概算学費
- 自分の現在の経済状況(アルバイト収入や奨学金の有無)
- なぜその人に頼みたいのかという誠実な理由
相手にとっては大きなリスクを伴う依頼です。「迷惑はかけない」という言葉だけでなく、万が一の際のバックアッププラン(奨学金の利用など)を具体的に示すことが、承諾を得るためのマナーです。
留学生や社会人学生が直面する保証人の問題

留学生や一度社会に出てから学び直す社会人学生にとって、日本の大学が求める「親族の保証人」という条件は大きな壁になることがあります。それぞれのケースにおける解決策を見ていきましょう。
留学生の場合:母国の親と国内の保証人
留学生の場合、母国の親を保証人に立てることは可能ですが、日本の大学側は「日本国内に居住する身元保証人」を別途求めることが多いです。これは、日本国内での生活指導や緊急時の対応を迅速に行うためです。
日本国内に親族がいない留学生のために、多くの大学では「留学生住宅総合補償」などの制度を利用したり、大学自体が保証人になったりする制度を設けています。また、日本語学校の先生や、支援団体の担当者が保証人を引き受けてくれるケースもあります。入学前に、国際交流課などの窓口で相談することが不可欠です。
社会人学生の場合:自己保証は認められるか
社会人学生は、すでに経済的に自立しているため「なぜ今さら親のサインが必要なのか」と疑問に感じることも多いでしょう。残念ながら、多くの大学では依然として「本人以外の保証人」を求める規約が残っています。
しかし、社会人の場合は配偶者を保証人に立てることが認められるケースが大半です。また、勤務先の企業が保証人(法人保証)になることを認める大学もあります。自身の収入証明書を提出することで、保証人の条件を緩和してもらえる可能性もあるため、募集要項を精査した上で事務局と交渉する余地があります。
専門職大学院や通信制大学の場合
より柔軟な対応を行っているのが、専門職大学院や通信制大学です。これらの機関では、学生の多くが社会人であることを前提としているため、保証人を不要としたり、緊急連絡先の登録のみで済ませたりする場合があります。
「保証人をどうしても立てられない」ということが進路選択の大きな悩みであるならば、こうした柔軟な制度を持つ教育機関を選択肢に入れるのも一つの戦略です。
大学の保証人に関するよくある疑問(Q&A)
ここでは、受験生やその保護者から寄せられることが多い、保証人に関する細かな疑問に答えていきます。
Q1. 年金受給者や無職の親でも保証人になれますか?
A. 結論から言えば、多くの大学で可能です。ただし、大学側は「継続的な支払い能力」を重視します。年金収入が安定しており、これまでの貯蓄などで学費を賄える見込みがあれば、特段問題視されないことが一般的です。もし書類に収入証明の添付が求められ、そこで不安がある場合は、事前に大学へ「年金受給者だが可能か」を確認しておくと安心です。
Q2. 途中で保証人を変更することはできますか?
A. 可能です。保証人が亡くなった場合や、高齢による認知機能の低下、あるいは経済破綻などで役割を遂行できなくなった場合は、速やかに変更届を提出する必要があります。むしろ、適切な保証人がいない状態を放置することの方が問題視されるため、状況が変わったらすぐに大学の窓口へ相談しましょう。
Q3. 保証人の印鑑はシャチハタでも良いですか?
A. 基本的にシャチハタ(インク浸透印)は不可です。保証書は重要な法的書類であるため、朱肉を使って押印する認印、あるいは実印を求められます。大学によっては印鑑登録証明書の添付を求めることもあるため、早めに用意しておきましょう。
Q4. 兄弟や姉妹が保証人になっても良いですか?
A. その兄弟姉妹が成人しており、かつ独立した生計を営んでいる(就職して収入がある)のであれば、認められるケースが多いです。ただし、学生同士(兄も大学生など)の場合は、支払い能力がないとみなされるため、保証人にはなれません。
Q5. 離婚している場合、離れて暮らす親に頼んでも良いですか?
A. はい、問題ありません。戸籍上の親子関係があれば、同居していなくても保証人の資格があります。ただし、緊急時の連絡がスムーズに取れることや、本人と適切なコミュニケーションが取れる状態であることが前提となります。
まとめ

大学の保証人は、単なる手続き上の形式ではなく、学生の学びを支える法的な後ろ盾です。基本的には父母に依頼するのが一般的ですが、家庭の事情でそれが難しい場合でも、機関保証や保証代行サービス、大学独自の相談窓口など、解決の道は必ず用意されています。
大切なのは、一人で悩まずに大学の募集要項を熟読し、必要であれば入学課や事務局に正直に相談することです。保証人制度の目的は「学生が安心して学業に専念できる環境を守ること」にあります。この記事で紹介した条件や対処法を参考に、万全の準備を整えて、輝かしいキャンパスライフの第一歩を踏み出してください。
まずは、自分の志望校の「入学手続き案内」を取り寄せ、保証人に関する具体的な規定を確認することから始めてみましょう。もし周囲に頼れる人がいないと分かったら、即座にJASSOの機関保証などの制度をリサーチし、早め早めのアクションを心がけてください。


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