私道の共有持分トラブル解決マニュアル|知っておくべき権利と対処法

近年、住宅地の拡大や古い住宅地での世代交代により、「私道の共有持分」に関するトラブルが急増しています。ある調査によると、不動産関連の相談の中で私道に関する問題は過去5年で約40%も増加したというデータもあります。

「隣人が私道の通行を妨げている」「共有者の一人が勝手に私道を改修した」「維持費の負担を拒否する共有者がいる」など、様々なトラブルが全国各地で発生しています。これらの問題の多くは、私道の権利関係や法的知識の不足から生まれています。

この記事では、私道の共有持分とは何か、トラブルが起きる原因、そして解決するための実践的な方法までを、法律の専門知識がない方でも理解できるよう分かりやすく解説します。

これから家を購入する予定の方も、すでに私道トラブルに悩まされている方も、この記事を読むことで必要な知識と具体的な対処法を身につけることができますのでぜひご参考ください。

共有持分は権利関係が複雑で、一般の不動産会社では扱うのが難しい案件が多いです。そのため、法律事務所と提携しており、共有持分専門の不動産会社に相談することが重要です。以下の記事で共有持分が得意な不動産会社を厳選しましたのでご参考ください。

関連記事:共有持分の売却・買取が得意なおすすめの不動産会社まとめ!

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目次

私道の共有持分の基本知識

私道とは何か?公道との違い

まず「私道」とは何かを理解しましょう。道路は大きく「公道」と「私道」に分けられます。

公道は国や地方自治体が管理する道路で、道路法で定められた「道路」や建築基準法上の「公衆用道路」がこれにあたります。一方、私道は個人や複数の人が所有する道路です。つまり、誰かの「土地」であるという点が公道との大きな違いです。

私道には、一人が所有する「単独所有型」と、複数の人が共同で所有する「共有型」があります。特に問題が発生しやすいのが、この「共有型」の私道です。

共有持分の意味と仕組み

「共有持分」という言葉は少し難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと「土地を複数の人で共同所有している時の、各人の所有割合」を指します。

例えば、Aさん、Bさん、Cさんの3人で私道を共有している場合、「Aさんが3分の1、Bさんが3分の1、Cさんが3分の1の持分を持つ」というように分けられます。この持分は必ずしも均等である必要はなく、「Aさんが2分の1、Bさん・Cさんがそれぞれ4分の1」というように、様々な割合で設定されることもあります。

この持分割合は、一般的に登記簿に記載されています。しかし、古い私道では正確な持分が不明確なケースもあり、これがトラブルの元になることも少なくありません。

所有権と利用権の違い

私道に関わる権利には、「所有権」と「利用権」の二つがあります。

所有権は文字通り土地を所有する権利で、持分に応じた権利を持ちます。一方、利用権は私道を通行したり使用したりする権利です。重要なのは、所有者でなくても利用権を持つ場合があるということです。

例えば、私道に接している土地の所有者は、その私道の所有者でなくても、一般的には「囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)」という権利によって通行することができます。これは自分の土地に出入りするために必要な通行権を認めた民法上の権利です。

また、長年にわたって私道を通行してきた実績がある場合、「通行地役権」が認められることもあります。

こうした権利関係を正しく理解することで、「通行を禁止された」「急に通行料を請求された」といったトラブルから身を守ることができます。

よくある私道の権利関係パターン

実際の私道の権利関係は、主に以下のようなパターンに分けられます。

  1. 周辺住民全員が持分を持つパターン:住宅地開発時に道路部分を住民全員で共有するよう設定されたケース。
  2. 一部の住民だけが持分を持つパターン:歴史的経緯で特定の住民だけが所有権を持つケース。
  3. 開発業者が所有権を持つパターン:開発後も業者が所有権を手放していないケース。
  4. 所有者不明のパターン:古い私道で権利関係が不明確なケース。

それぞれのパターンによって起こりやすいトラブルや解決方法が異なるため、まずは自分の関わる私道がどのパターンに当てはまるかを確認することが大切です。

私道の共有持分で起きる主なトラブル事例

私道の共有持分で起きる主なトラブル事例

通行に関するトラブル

最も多いトラブルが通行に関する問題です。具体的には以下のようなケースがよく報告されています。

「共有者の一人が私道に車や物を置いて通行を妨げる」「通行できる人を制限しようとする」「勝手にチェーンやバリケードを設置する」など、様々なトラブルが発生しています。

特に難しいのは、共有持分を持つ人それぞれに土地の使用権があるため、一定の範囲内での使用は認められるという点です。しかし、他の共有者や周辺住民の通行を著しく妨げるような使用は「共有物の管理に関する事項」として制限される可能性があります。

維持管理費用の負担トラブル

私道は公道と違い、舗装の修繕や清掃、排水設備の維持など、所有者が維持管理の責任を負います。この費用負担をめぐるトラブルも非常に多いです。

「一部の住民だけが費用を負担して不公平」「共有者の一人が支払いを拒否している」「高額な修繕費用の分担方法で揉めている」といった問題が典型的です。

基本的には共有持分に応じた費用負担が原則ですが、実際の使用頻度や利益の度合いによって調整される場合もあります。明確なルールがない状態で突然大きな修繕が必要になると、特にトラブルになりやすいので注意が必要です。

改修・工事に関するトラブル

私道の改修や工事を行う際にも、共有者間でトラブルが発生しやすくなっています。

「一部の共有者が勝手に私道を拡張した」「工事の内容や方法について合意ができない」「工事後の仕上がりに不満がある」といったケースです。

私道の変更を伴う工事は、民法上「共有物の変更」に当たるため、原則として共有者全員の同意が必要です。しかし、小規模な補修や維持管理のための工事は「共有物の管理に関する事項」として、持分の過半数の同意で可能な場合もあります。どこまでが「管理」でどこからが「変更」なのかの判断が難しく、これがトラブルの原因になることもあります。

新たな通行者・利用者に関するトラブル

周辺環境の変化によって新たな通行者が増えることでも、トラブルが発生します。

「近隣に新しい店舗ができて交通量が増えた」「知らない人の通り抜けが多くなった」「宅配業者や郵便配達の車が頻繁に通るようになった」などの状況変化に対して、共有者間で対応が分かれることがあります。

私道であっても、不特定多数の人が自由に通行できる状態が長く続いている場合、「公共の道路」としての性質を持つとみなされ、通行を制限する権利が制限される可能性もあります。こうした法的な微妙な問題がトラブルをさらに複雑にすることもあります。

トラブルを防ぐための基本的な知識

トラブルを防ぐための基本的な知識

所有関係を確認する方法

トラブル防止の第一歩は、私道の正確な所有関係を把握することです。確認方法としては主に以下の手段があります。

  1. 登記簿の確認:法務局で私道の登記簿謄本を取得し、所有者と持分割合を確認できます。最近では、オンラインでの取得も可能になっています。費用は一通数百円程度です。
  2. 古い契約書や図面の確認:土地購入時の契約書や、住宅地の開発時の図面に私道の権利関係が記載されていることがあります。
  3. 役所の道路台帳の確認:市区町村の道路管理課などで「道路台帳」を閲覧することで、公道なのか私道なのかを確認できます。
  4. 境界確認書の確認:土地の境界確認書に私道の権利関係について記載がある場合もあります。

特に古い住宅地では、登記上の情報が実態と異なっていることもあるため、複数の方法で確認することをおすすめします。

共有者の権利と義務

私道の共有者には以下のような権利と義務があります。

私道所有者の権利
  • 共有持分に応じて私道を使用する権利
  • 共有物の管理に関する事項について、持分に応じた議決権
  • 共有持分を自由に処分(売却など)する権利
私道所有者の義務
  • 私道の維持管理費用を持分に応じて負担する義務
  • 他の共有者の権利を侵害しない義務
  • 周辺住民の正当な通行権を尊重する義務

法律上の保護される権利

私道に関連して法律上保護される主な権利には以下のようなものがあります。

  1. 囲繞地通行権:自分の土地が他の土地に囲まれて公道に出られない場合、周囲の土地を通行する権利(民法第210条)
  2. 通行地役権:長期間にわたる通行の実績によって認められる通行の権利
  3. 相隣関係上の権利:隣接する土地との間の権利関係を定めた民法上の権利
  4. 公法上の接道義務:建築基準法上、建物を建てるためには一定幅員以上の道路に接していることが義務付けられている

これらの権利は、私道の所有権とは別に保護されることが多いため、たとえ私道の所有者であっても、これらの権利を不当に侵害することはできません。

知っておくべき重要な判例

私道トラブルに関する裁判例は数多くありますが、特に重要なものをいくつか紹介します。

  1. 最高裁判所平成11年7月13日判決:私道の一部に物を置くことが、他の共有者の共有物使用権を侵害するかが争われた事例。共有者の一人が私道に常時物を置くことは、「共有物の本来の用法に反する」として、撤去が命じられました。
  2. 最高裁判所平成10年3月26日判決:長年にわたって住民が私道を通行していた実績から、黙示の通行地役権が認められた事例。
  3. 東京地裁平成22年9月10日判決:私道の舗装工事について、小規模な補修は「管理行為」として共有持分の過半数の同意で可能とされた事例。

これらの判例から学べるのは、私道であっても無制限に権利を主張できるわけではなく、長年の利用実態や共有物の性質に応じた合理的な利用が求められるということです。

トラブル発生時の対処法

トラブル発生時の対処法

初期対応のポイント

私道トラブルが発生した際の初期対応は、その後の展開を大きく左右します。以下のポイントを押さえましょう。

  1. 冷静な対応:感情的になると問題が拡大する可能性があります。まずは冷静に状況を整理しましょう。
  2. 事実関係の整理と記録:いつ、どこで、誰が、何をしたのかを具体的に記録します。写真や動画による記録も有効です。
  3. 権利関係の確認:登記簿や契約書を再確認し、正確な権利関係を把握します。
  4. 相手の主張の聞き取り:相手がなぜそのような行動をとっているのか、主張を理解することも重要です。
  5. 専門家への事前相談:本格的な交渉の前に、専門家に相談して法的な立場を確認することも検討しましょう。

特に重要なのは、早い段階で正確な情報を収集することです。「自分が絶対に正しい」と思い込んで行動すると、後で自分の認識が誤っていたことが判明し、解決がさらに難しくなることもあります。

話し合いで解決するためのコツ

多くの私道トラブルは、適切な話し合いによって解決可能です。効果的な話し合いのコツを紹介します。

  1. 中立的な場所での話し合い:一方の自宅ではなく、町内会の集会所や公民館など、中立的な場所で話し合うことで、対等な立場での協議が可能になります。
  2. 第三者の立会い:町内会長や自治会長など、中立的な第三者に立ち会ってもらうことで、冷静な話し合いがしやすくなります。
  3. 具体的な提案を用意する:「ダメだ」「認められない」という否定だけでなく、具体的な代替案を提示することが重要です。
  4. 法的根拠を示す:感情論ではなく、法律や判例に基づいた主張をすることで説得力が増します。
  5. 長期的な関係性を考慮する:近隣住民との関係は長期にわたるものです。一時的な勝ち負けだけでなく、長期的な関係性を考慮した解決策を模索しましょう。

話し合いの際には、相手を尊重する姿勢を持ちつつも、自分の権利や立場もしっかりと主張することが大切です。

専門家に相談するタイミングと選び方

話し合いでの解決が難しい場合は、専門家への相談を検討しましょう。相談するタイミングとしては以下のような状況が考えられます。

  • 相手が一切話し合いに応じない
  • 法的な権利関係が複雑で自分では判断できない
  • 相手が法的手続きをちらつかせてきた
  • 物理的な妨害行為があり安全が脅かされている

専門家としては、主に以下の選択肢があります。

  1. 弁護士:法的なアドバイスから交渉、訴訟まで一貫して依頼できます。初回相談料は30分5,000円程度から、着手金は20〜30万円程度が一般的です。
  2. 司法書士:登記関係の確認や、簡易裁判所での訴訟代理が可能です。弁護士より費用が抑えられることが多いです。
  3. 行政書士:示談書など各種文書の作成や、行政機関との交渉を得意としています。
  4. 土地家屋調査士:境界確定など土地の測量に関する専門家です。

相談先を選ぶ際は、私道問題の解決実績がある専門家を選ぶことをおすすめします。複数の専門家に相談して比較することも有効です。

法的手続きを取る場合の流れ

話し合いや専門家を交えた交渉でも解決しない場合は、法的手続きを検討することになります。主な手続きの流れは以下の通りです。

  1. 内容証明郵便の送付:正式な通知として、問題点と要求事項を明記した内容証明郵便を送付します。これにより相手に問題の重大さを認識させるとともに、後の訴訟でも証拠として使えます。
  2. 調停の申立て:裁判所で行われる話し合いの場です。裁判官と調停委員が間に入って解決策を探ります。申立て費用は数千円程度と比較的安価です。
  3. 仮処分の申立て:急を要する場合(例:私道が物理的に塞がれて通行できない)は、仮処分を申し立てることもできます。
  4. 訴訟の提起:最終手段として、訴訟を提起します。共有物分割請求訴訟、妨害排除請求訴訟、通行権確認訴訟などがあります。

法的手続きは時間とコストがかかりますが、最終的な解決のためには有効な手段です。ただし、近隣との関係性が完全に壊れる可能性もあるため、十分に検討した上で進めることが重要です。

トラブル解決のための具体的ステップ

トラブル解決のための具体的ステップ

状況の正確な把握と記録

トラブル解決の第一歩は、状況を正確に把握し記録することです。具体的には以下のような情報を整理しましょう。

  1. 私道の正確な位置と範囲:法務局の地図や測量図で確認します。
  2. 所有者と持分の確認:登記簿で確認します。複数人の場合は全員の情報を把握します。
  3. 利用状況の記録:誰がどのように利用しているか、写真や日記形式で記録します。特に問題となっている利用方法については詳細に記録しましょう。
  4. 過去の経緯の記録:いつから問題が発生したのか、過去にどのような話し合いや取り決めがあったのかを時系列で整理します。

これらの情報は、専門家への相談時や法的手続きの際に非常に重要になります。「〜だったと思う」という曖昧な情報ではなく、具体的な事実に基づいた記録を残すことが解決への近道です。

共有者間での協議の進め方

複数の共有者間での協議を効果的に進めるためのステップを紹介します。

  1. 全共有者の特定と連絡:登記簿などから全共有者を特定し、協議の場に招集します。連絡が取れない場合は、住民票の取得などで現住所を調べる方法もあります。
  2. 議題の明確化:「私道の舗装改修について」「私道の維持管理費用の分担について」など、具体的な議題を設定します。
  3. 資料の事前配布:協議に必要な資料(見積書、工事計画書、過去の決定事項など)を事前に配布し、各自が検討する時間を確保します。
  4. 議事進行役の選定:中立的な立場の人を議事進行役として選定します。場合によっては外部の専門家に依頼することも検討しましょう。
  5. 議事録の作成:協議内容を記録し、後日トラブルにならないよう議事録を作成して参加者全員に配布します。
  6. 合意事項の文書化:決定事項は必ず文書にして、全員が署名するようにします。

協議の際は、法律上の要件(共有物の管理は持分の過半数、変更は全員一致など)を意識しながら進めることが重要です。

調停・訴訟の選択肢と進め方

法的手続きを取る場合の選択肢と進め方について詳しく見ていきましょう。

調停の場合

  • 申立先:私道がある地域を管轄する簡易裁判所または地方裁判所
  • 必要書類:調停申立書、私道の登記簿謄本、位置図など
  • 費用:申立手数料(数千円)+ 切手代
  • 期間:3〜6か月程度が一般的

調停は比較的費用が安く、当事者間の関係悪化を最小限に抑えられるメリットがあります。また、専門家ではない調停委員が一般常識に基づいた解決案を提示してくれることもあります。

訴訟の場合

  • 申立先:私道がある地域を管轄する地方裁判所(訴額により簡易裁判所の場合もあり)
  • 必要書類:訴状、証拠書類、私道の登記簿謄本など
  • 費用:収入印紙代(訴額により異なる)+ 切手代 + 弁護士費用
  • 期間:1年以上かかることも珍しくない

訴訟は最終的な解決手段として有効ですが、費用と時間がかかることを理解しておく必要があります。また、判決は法律に基づいた白黒はっきりしたものになるため、近隣関係が完全に修復不可能になる可能性もあります。

解決事例から学ぶポイント

実際の解決事例から学べるポイントをいくつか紹介します。

事例1:通行妨害の解決事例 ある共有私道で、一部の共有者が私道上に常時車を駐車し、他の住民の通行を妨げていました。話し合いでは解決せず、最終的に妨害排除請求訴訟となりましたが、裁判所から「私道は本来通行のためのものであり、特定の共有者が独占的に使用することは許されない」との判断が示され、車の撤去が命じられました。

この事例から学べるのは、「共有者であっても、私道を独占的に使用する権利はない」ということです。共有物の本来の用途を尊重することが重要です。

事例2:舗装工事をめぐる合意形成 老朽化した私道の舗装工事について、費用負担をめぐって共有者間で対立が生じました。調停の場で、「現在の利用状況に応じた費用負担」という観点から、通行頻度や利益の程度に応じた費用分担案が提示され、全員が合意しました。

この事例からは、「形式的な持分割合だけでなく、実態に即した柔軟な解決策を模索することの重要性」が学べます。

事例3:所有者不明私道の解決事例 古い住宅地の私道で、登記上の所有者が既に亡くなっており相続人も不明という状態でした。舗装の劣化が進み危険な状態になったため、周辺住民が共同で「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」を活用し、市に対して管理を求めました。

この事例からは、「新しい法制度を活用した解決策もある」ということが学べます。私道問題に関する法制度は近年整備されてきているので、最新の制度も調査することが重要です。

予防策と長期的な解決法

予防策と長期的な解決法

共有者間で取り決めを作る重要性

私道トラブルの多くは、明確なルールがないことから発生します。トラブルを予防するためには、共有者間で以下のような事項に関する取り決めを作ることが重要です。

  • 私道の維持管理方法と費用分担のルール
  • 補修や改修を行う際の決定方法
  • 私道の使用ルール(駐車の可否など)
  • トラブル発生時の解決手順

特に新しく住宅を購入する際には、私道の権利関係と管理ルールについて事前に確認することをおすすめします。既存の住宅地では、町内会や自治会の活動の一環として、私道の管理ルールを作成することも効果的です。

管理規約の作り方と例

より具体的な管理規約の作り方と例を紹介します。

管理規約に盛り込むべき主な項目

  1. 目的と定義:規約の目的、私道の範囲、共有者の定義など
  2. 維持管理:日常的な清掃や除雪の方法、定期的な点検の頻度など
  3. 費用負担:通常の維持費と大規模修繕費の分担方法、徴収方法など
  4. 使用ルール:通行以外の使用(駐車、植栽など)に関するルールなど
  5. 意思決定方法:通常の管理事項と変更を伴う事項の決定方法の違いなど
  6. 規約の変更方法:将来的な規約変更の手続きなど

規約作成の際には、専門家(弁護士や行政書士)のチェックを受けることをおすすめします。特に、民法上の共有物に関するルール(管理は過半数、変更は全員一致など)に反する内容は無効になる可能性があるので注意が必要です。

将来のトラブルを防ぐための登記手続き

登記手続きを適切に行うことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。

  1. 共有者と持分の明確化:未登記の場合は共有者全員の名義と持分を明確にして登記します。
  2. 境界の明確化:隣接地との境界が不明確な場合は、境界確定測量を行い、境界確定書を作成します。
  3. 公道への寄付:条件を満たす場合は、私道を市区町村に寄付して公道化する方法もあります。この場合、維持管理の責任が自治体に移るメリットがあります。
  4. 私道の分筆登記:共有私道を各所有者の敷地に分割することで、権利関係をシンプルにする方法もあります。ただし、全員の合意が必要です。

これらの登記手続きには費用がかかりますが、将来的なトラブル防止のための投資と考えるとよいでしょう。特に不動産売買の際に私道の権利関係が不明確だと、取引自体に支障が出ることもあります。

専門家に相談すべきケース

以下のようなケースでは、早めに専門家に相談することをおすすめします。

  1. 所有者の一部が行方不明:相続などで所有者が多数になり、連絡が取れない人がいる場合は、専門家の助けを借りて対応する必要があります。
  2. 登記上の表示と実態が異なる:測量の結果、登記上の面積や形状と実際の私道が異なる場合は、早めに専門家に相談しましょう。
  3. 長期間放置された問題がある:長年にわたって放置された問題は、権利関係が複雑化している可能性があります。
  4. 法律の改正があった場合:私道に関する法制度は近年変わってきています。最新の制度を活用できる可能性もあるので、専門家に相談することをおすすめします。

私道問題は一見シンプルに見えても、実際には複雑な法律問題を含んでいることが少なくありません。「少し面倒だけど大丈夫だろう」と思って放置すると、後で大きなトラブルになることもあるので注意しましょう。

まとめと参考情報

重要ポイントの再確認

ここまで見てきた私道の共有持分トラブルに関する重要ポイントを再確認しておきましょう。

  • 私道の共有持分トラブルは、権利関係の理解不足から発生することが多い
  • 所有権と利用権は異なり、所有者でなくても利用権を持つ場合がある
  • トラブル解決の第一歩は、正確な権利関係の把握と記録
  • 話し合いによる解決が最も円満で、費用対効果も高い
  • 予防策として、共有者間での明確な取り決めづくりが重要
  • 専門家への相談や法的手続きは、状況に応じて適切に活用する

私道問題は、一度解決しても状況の変化によって再び問題が発生することもあります。定期的な確認と必要に応じたルールの見直しを行うことが、長期的な安心につながります。

相談できる専門機関リスト

私道の問題について相談できる主な専門機関を紹介します。

  1. 法テラス(日本司法支援センター):法律相談が可能で、収入に応じて無料相談も利用できます。全国に事務所があり、電話での問い合わせも可能です。
  2. 弁護士会の法律相談センター:各地の弁護士会で法律相談を実施しています。初回30分5,000円程度が一般的です。
  3. 司法書士会の相談センター:登記や簡易裁判所での手続きに関する相談ができます。
  4. 土地家屋調査士会:境界や測量に関する相談ができます。
  5. 市区町村の相談窓口:自治体によっては、私道問題に関する相談窓口を設けているところもあります。
  6. 国土交通省の私道相談窓口:私道の管理や整備に関する相談ができます。

専門機関に相談する際は、事前に資料を整理し、相談内容を明確にすることで、より有益なアドバイスを得ることができます。

役立つ法律と条文の紹介

私道問題に関連する主な法律と条文を紹介します。

  1. 民法第249条〜第264条:共有に関する規定があり、共有物の管理や変更、分割請求などについて定められています。
  2. 民法第210条〜第213条:相隣関係に関する規定で、特に第210条の囲繞地通行権は重要です。
  3. 建築基準法第42条、第43条:建物の敷地と道路の関係について定められており、私道が建築基準法上の道路かどうかに影響します。
  4. 不動産登記法:私道の登記に関する手続きが定められています。
  5. 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法:所有者不明の私道に関する新しい制度が含まれています。

これらの法律を全て理解するのは難しいですが、トラブルに直面した際に関連条文を確認することで、自分の立場を正確に把握することができます。

参考資料・書籍の紹介

さらに詳しく知りたい方のために、参考になる資料や書籍を紹介します。

  1. 「私道・境界・近隣トラブル解決マニュアル」:弁護士が実例をもとに解説しているので分かりやすいです。
  2. 「Q&A私道・境界・日照のトラブル解決法」:具体的な質問形式で解説されています。
  3. 国土交通省「私道の手引き」:私道の管理や整備に関する行政の支援制度などが紹介されています。
  4. 法務省「登記簿の見方」:登記簿の読み方が詳しく解説されています。
  5. 各地の弁護士会が発行している「私道トラブル解決ガイド」:地域特有の問題と解決法が紹介されています。

これらの資料を参考にしながら、必要に応じて専門家にも相談することで、私道問題を適切に解決していくことができるでしょう。

今すぐできる3つのアクション

この記事を読んだ後、すぐに実行できる具体的なアクションを3つ紹介します。

  1. 自分の関わる私道の権利関係を確認する:登記簿を取得して、所有者と持分割合を確認しましょう。まだ確認していない方は、これが最優先のアクションです。法務局のウェブサイトから、オンラインで登記簿謄本を取得することもできます。
  2. 私道の現状と使用状況を記録する:スマートフォンのカメラで私道の状況(幅員、舗装状態、周辺環境など)を撮影し、誰がどのように利用しているかをメモしておきましょう。将来トラブルが発生した際の貴重な資料になります。
  3. 共有者と連絡先を交換する:私道の共有者同士で連絡先を交換し、ちょっとした問題でも相談できる関係を作っておきましょう。可能であれば、年に一度は私道の状態について話し合う機会を設けることをおすすめします。

これは、いずれも費用をほとんどかけずに実行できるものです。少しの手間をかけるだけで、将来の大きなトラブルを未然に防ぐことができます。私道問題は「備えあれば憂いなし」です。今日からできることから始めてみましょう。

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