「親子で共有名義の二世帯住宅、相続で家族が揉めないために今すべきことは?」この疑問を持つ方は非常に多いです。実際、相続に関する事件は、家事審判・調停事件全体の約28%を占めており、およそ4件に1件が相続問題となっています(令和4年 司法統計年報より)。
特に二世帯住宅の相続は、通常の相続とは異なる複雑な問題が多く、準備不足により家族間でトラブルになるケースが後を絶ちません。
今回は、二世帯住宅の共有名義相続について、初心者の方にもわかりやすく解説します。生前の準備から相続発生後の手続きまで、失敗しないためのポイントを具体的にお伝えします。
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二世帯住宅の共有名義相続で起きる問題とは?

実際に多いトラブル事例
二世帯住宅の相続でよく起きるトラブルを見てみましょう。
事例1:兄弟間での意見対立 親と長男家族が二世帯住宅で同居していたケースです。親が亡くなった後、長男は住み続けたいと希望しましたが、長男以外の兄弟2人が「売却して現金で分配すべき」と主張。結果として、長男は他の兄弟に代償金として1000万円以上を支払うことになりました。
事例2:売却時の意見不一致 親子で共有名義の二世帯住宅を相続した際、子供3人全員が共有者となりました。その後、長男が転勤になり「売却したい」と提案しましたが、次男が住み続けることを希望。共有者全員の同意がないと売却できないため、話し合いが膠着状態に陥ってしまいました。
共有名義の基本的な仕組み
共有名義とは、1つの不動産を複数の人が決められた割合で所有する方法です。例えば、親が2/3、子が1/3の割合で所有している場合、それぞれが持分を持つことになります。
重要なのは、共有名義の不動産は以下のような特徴があることです。
- 売却時は共有者全員の同意が必要
- 修繕など重要な変更も全員の同意が必要
- 賃貸に出す場合も全員の同意が必要
単独名義と違い、1人の判断で自由に処分できないため、相続時に複雑な問題が生じやすいのです。
二世帯住宅相続の3つのパターン別解説

パターン1:親の単独名義の場合
親が建物と土地すべてを単独で所有している場合、相続時は通常の不動産相続と同じ扱いになります。親が亡くなると、その持分全体が相続財産となり、法定相続人の間で分割することになります。
この場合の注意点は、二世帯住宅は通常の住宅より売却が難しいことです。二世帯向けの構造は、一般的な住宅購入者にとって使いにくく、そのため買い手が見つかりにくい傾向があります。住み続けたい相続人がいる場合は、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」を検討することが多くなります。
パターン2:親子の共有名義の場合
親と子が共有名義で所有している場合、親が亡くなると親の持分のみが相続対象となります。例えば、親が1/2、子が1/2の共有で、親に子供が3人いる場合、親の1/2を3人で相続することになります。
計算例:
- 相続前:親1/2、子A1/2
- 相続後:子A7/12(元の1/2+相続分1/12)、子B1/12、子C1/12
このパターンは相続人の数が増加しやすく、将来的な問題を起こしやすいため注意が必要です。
パターン3:区分所有登記の場合
二世帯住宅の建物を1階と2階で別々の建物として登記する「区分所有登記」の場合、税制上の取り扱いが大きく変わります。この登記方法では、後述する「小規模宅地等の特例」が適用されないため、相続税が大幅に増加する可能性があります。
重要なポイント:区分所有登記を行っている二世帯住宅は、実は少なくありません。「共有名義のつもりでいたら区分所有登記だった」というケースもよく見られます。登記事項証明書で現在の登記状況を必ず確認しましょう。
区分所有登記と共有名義の違いは、登記の仕方だけでなく、税法上の扱いにも大きく影響するため、事前の確認が極めて重要です。
相続税を大幅に減らす「小規模宅地等の特例」の活用法

小規模宅地等の特例とは?
小規模宅地等の特例は、相続した居住用土地の評価額を最大80%減額できる制度です。この特例を使えば、例えば1億円の土地が2000万円の評価額となり、相続税を大幅に削減できます。
適用条件は以下の通りです:
- 被相続人が居住していた土地であること
- 相続人が同居または持ち家に住んでいない(家なき子)こと
- 相続税の申告期限まで所有・居住していること
- 適用限度面積は330平方メートルまで(平成26年改正により240㎡から拡大)
共有名義と区分登記の税金の違い
二世帯住宅で重要なのは、建物の登記方法によって特例の適用が異なることです。
平成26年の重要な税制改正 それまでは、建物内で行き来できない完全分離型の二世帯住宅は「別居」とみなされ、特例が適用されませんでした。そのため、急いで床や壁を壊して階段や廊下を作る人が多くいました。
しかし、「建物の構造だけで相続税が数千万円も変わるのはおかしい」という意見により、平成26年1月1日から税制改正が行われ、「部分共有型」「完全共有型」「完全分離型」すべてが特例の対象となりました。
ただし、落とし穴が残っています!
現在は建物の構造ではなく、登記方法で判断されます。
共有名義の場合 建物全体を1つの建物として登記し、持分で所有する方法。この場合、小規模宅地等の特例が適用可能です。
区分所有登記の場合 1階と2階を別々の建物として登記する方法。この場合、「別居」とみなされ、小規模宅地等の特例が適用されません。
実際の計算例で比較してみましょう。
ケース:土地評価額1億円、建物評価額3000万円の二世帯住宅
共有名義の場合:
- 土地:1億円×80%減額=2000万円
- 合計課税価格:2000万円+3000万円=5000万円
区分所有登記の場合:
- 土地:1億円(減額なし)
- 合計課税価格:1億円+3000万円=1億3000万円
この違いにより、相続税額は数千万円変わることもあります。
特例を最大限活用する方法
特例を活用するためには、まず現在の登記状況を確認することが重要です。法務局で登記事項証明書を取得すれば、共有名義か区分所有登記かを確認できます。
もし区分所有登記になっている場合、相続前に共有名義への変更を検討できますが、この変更には所得税や贈与税が課される可能性があるため、必ず税理士に相談してから行うことをお勧めします。
よくある質問として「住民票で世帯分離している場合は特例が使えないか?」というものがありますが、これは誤解です。小規模宅地等の特例は、実際に同居している実態があるかどうかで判断されます。住民票で世帯分離していても、実際に同居していれば特例は適用可能です。
生前にできる相続対策の具体的な方法

遺言書の準備方法
二世帯住宅の相続では、遺言書の準備が特に重要です。おすすめは「公正証書遺言」です。自筆証書遺言と異なり、公証人が作成に関与するため、法的な不備が生じにくく、相続時の手続きもスムーズになります。
遺言書に明記すべき内容:
- 二世帯住宅の相続方法(単独相続か共有相続か)
- 他の相続人への配慮(代償分割の取り決めなど)
- 相続後の住宅使用に関する取り決め
特に重要なのは、遺留分への配慮です。法律上、相続人には最低限の相続分(遺留分)が保障されているため、これを考慮した内容にする必要があります。
家族間での事前協議のポイント
相続について家族で話し合う際は、親が元気なうちに行うことが理想的です。2025年問題により、団塊世代が75歳以上となることで、相続に関する問題が社会的にも大きな課題となっています。
話し合いのタイミングとしては、以下のような機会が適しています。
- 二世帯住宅への引っ越し時
- 親の退職時
- 子供の結婚や出産時
話し合いで決めておくべき項目:
- 相続時に住宅に住み続ける人
- 住み続ける人が他の相続人に支払う代償金の算出方法
- 売却時の意思決定方法
重要なのは、合意内容を書面に残すことです。口約束だけでは、いざという時に「言った言わない」の問題になりかねません。
生前贈与の活用
生前贈与も有効な相続対策の一つです。特に二世帯住宅では、以下の制度が活用できます:
相続時精算課税制度 60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫への贈与について、累計2500万円まで贈与税がかからない制度です。相続時に相続財産に加算されますが、生前に財産を移転できるメリットがあります。
住宅取得資金贈与の特例 住宅の新築・購入・リフォーム資金として贈与を受ける場合、最大3000万円まで贈与税が非課税となる制度です。二世帯住宅の建築・リフォーム時に活用できます。
この特例を利用すれば、親からの資金援助により子供名義で住宅を建築することも可能です。ただし、実際の資金負担割合と登記の持分が異なると、贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。
相続発生後の手続きの進め方
相続開始から3ヶ月以内にすること
親が亡くなってから3ヶ月以内は、特に重要な決定をする期間です。
相続放棄の検討 親に多額の借金がある場合、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄の期限は相続開始から3ヶ月以内なので、早めに財産と負債を調査することが重要です。
遺言書の確認 遺言書がある場合は、家庭裁判所での検認が必要です(公正証書遺言を除く)。遺言書の内容は、その後の相続手続きに大きく影響するため、速やかに確認しましょう。
相続人の確定 戸籍謄本等を取得し、相続人を確定します。二世帯住宅の場合、同居していない相続人もいることが多いため、全員への連絡が必要です。
遺産分割協議の進め方
相続人が確定したら、遺産分割協議を行います。二世帯住宅の場合、以下の分割方法があります:
現物分割 不動産はそのまま特定の相続人が相続し、他の財産で調整する方法。二世帯住宅の場合、物理的に分割できないため、この方法が適していることが多いです。
換価分割 不動産を売却して現金化し、その代金を相続人で分割する方法。住み続けたい人がいない場合に選択されます。ただし、二世帯住宅は一般的な住宅より売却が難しく、売却価格が下がる可能性があることを考慮する必要があります。
代償分割 特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う方法。二世帯住宅で同居を続けたい場合に適しています。代償金の資金調達が課題となることが多いです。
相続税申告の注意点
相続税の申告期限は、相続開始から10ヶ月以内です。二世帯住宅の相続で注意すべき点:
- 小規模宅地等の特例を適用する場合は、要件確認が必要
- 不動産の評価は、路線価方式や倍率方式で行う
- 特例適用には、申告書への記載が必須(特例により相続税が0円になる場合でも申告が必要)
申告書の作成は複雑なため、相続税に詳しい税理士への相談をお勧めします。
よくある質問と回避策

「親が認知症になったらどうする?」
親が認知症になると、法律行為(売買、贈与など)ができなくなります。この状況を回避するには、以下の方法があります:
成年後見制度 家庭裁判所に申立てをし、後見人を選任してもらう制度。後見人が親に代わって法律行為を行います。
家族信託 親が元気なうちに、財産の管理・処分権限を子に移す契約。認知症になっても、子が財産管理を継続できます。
どちらの方法も事前の準備が重要です。親の判断能力があるうちに検討することをお勧めします。
「兄弟が売却に反対している」
共有名義の二世帯住宅で、売却に反対する共有者がいる場合の対処法:
- まずは話し合いで解決を試みる
- 代償金による持分買取を提案する
- 調停や裁判による解決
重要なのは、お互いの事情を理解し合うことです。住み続けたい理由、売却したい理由を率直に話し合うことから始めましょう。
「税金が高くて払えない」
相続税が高額で支払いが困難な場合、以下の制度が利用できます:
延納制度 相続税を分割して支払う制度。最長20年間の分割払いが可能です。
物納制度 金銭に代えて、不動産などの財産で納税する制度。ただし、要件が厳しく、適用が難しい場合もあります。
いずれの制度も、相続税の申告期限内に申請する必要があります。
専門家への相談が必要なケース
司法書士への相談が必要な場合
- 相続登記の手続き
- 遺産分割協議書の作成
- 登記方法の変更(区分所有から共有への変更等)
税理士への相談が必要な場合
- 相続税申告が必要かの判断
- 小規模宅地等の特例申請
- 生前贈与の活用方法
- 区分登記から共有登記への変更時の税務影響
弁護士への相談が必要な場合
- 相続人間での紛争
- 遺留分侵害額請求
- 調停・裁判への対応
専門家への相談は、問題が複雑化する前の早い段階で行うことが重要です。特に、相続税申告の約90%は税理士が関与していることからも、専門家のサポートの重要性がわかります。
まとめ:二世帯住宅共有名義相続の成功への道筋
二世帯住宅の共有名義相続を成功させるための5つのポイント:
- 登記状況の確認:共有名義か区分所有かを把握する
- 事前の家族協議:全員が納得できる相続方法を話し合う
- 遺言書の準備:公正証書遺言で明確な意思表示をする
- 税制優遇の活用:小規模宅地等の特例を最大限利用する
- 専門家の活用:早めに司法書士・税理士に相談する
生前の準備が、家族の絆を守り、無用なトラブルを防ぎます。2025年問題を控えた今、早めの対策が重要です。
今すぐできる3つのアクション
1. 現在の登記状況を確認する
最寄りの法務局で「登記事項証明書」を取得してください。手数料は600円程度で、現在の名義形態(共有名義か区分所有登記か)が確認できます。オンライン申請も可能で、一部無料化されています。
特に確認すべきポイント:
- 「共有」の文字があるか
- 建物が複数個記載されているか
- 「区分建物」「区分所有」の記載があるか
2. 家族会議を開く
親が元気なうちに、家族全員で相続について話し合う機会を設けましょう。準備する資料:
- 不動産の評価額(固定資産税評価額)
- 家族構成図
- 現在の貯金・負債の概算
話し合いの内容は、必ず書面に残しておきましょう。特に、将来の住宅使用方法について全員の意見を聞くことが重要です。
3. 専門家への相談予約
地域の司法書士会や税理士会では、無料相談会を定期的に開催しています。まずは無料相談を利用して、自分たちの状況を客観的に把握することから始めましょう。
初回相談で聞くべき質問:
- 現在の登記状況で相続時に何が起きるか
- 小規模宅地等の特例が適用できるか
- 生前にできる対策は何か
- 専門家費用の概算
特に区分所有登記になっている場合は、早急な対策が必要な可能性があります。相続発生前であれば、まだ対策できることも多いため、一日も早く相談することをお勧めします。
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