「共有名義の不動産があるけど、他の共有者に言わずに自分の持分だけ売りたい…」
このような悩みを抱える方は少なくありません。親から相続した不動産を兄弟で共有しているケース、離婚後も元配偶者と共有名義のままになっている物件、投資用に友人と共同購入した不動産など、さまざまな状況があります。
共有持分を内緒で売りたいと考える理由も人それぞれでしょう。「他の共有者と折り合いが悪く話し合いができない」「急にお金が必要になった」「相続税の支払いのために売却したい」などの事情があるかもしれません。
しかし、共有持分を内緒で売ることには、思いがけない法的リスクが潜んでいます。
この記事では、共有持分の基本知識から、内緒で売る場合の具体的な方法、そして見落としがちな法的リスクまでを初心者にもわかりやすく解説します。
トラブルに巻き込まれることなく、最適な選択ができるような内容になっていますのでご参考ください。
共有持分は権利関係が複雑で、一般の不動産会社では扱うのが難しい案件が多いです。そのため、法律事務所と提携しており、共有持分専門の不動産会社に相談することが重要です。以下の記事で共有持分が得意な不動産会社を厳選しましたのでご参考ください。
共有持分の買取でおすすめの不動産会社TOP5
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共有持分の基本知識:そもそも共有持分とは何か

共有持分とは、一つの不動産を複数の人で所有している場合の、各人の所有割合のことです。たとえば、Aさん、Bさん、Cさんの3人で一つの土地を共有している場合、「Aさんが3分の1、Bさんが3分の1、Cさんが3分の1」というように持分が分かれています。
この持分は必ずしも均等である必要はなく、「Aさんが2分の1、Bさんが4分の1、Cさんが4分の1」というように不均等な場合もあります。持分の割合は登記簿に記載されており、「持分〇分の〇」という形で表示されています。
不動産共有持分の一般的なケース
不動産の共有持分が発生する代表的なケースは以下の通りです。
- 相続:最も多いのが相続です。親が所有していた不動産を子どもたちが共同で相続すると、自動的に共有状態になります。相続人が複数いる場合、遺言で特定の人に相続させる指定がなければ、法定相続分に応じて共有持分が発生します。
- 共同購入:夫婦や親子、友人同士などで不動産を共同購入すると、出資割合などに応じて共有持分が設定されます。
- 離婚後の財産分与:離婚時に不動産の名義変更をせず、共有名義のままになっているケースもあります。
- 投資目的:投資用不動産を複数人で共同購入する際に共有持分を設定することもあります。
共有者の権利と義務
共有持分を持つ各共有者には、以下のような権利と義務があります。
権利:
- 持分に応じて不動産から生じる収益(家賃など)を受け取る権利
- 持分を自由に処分(売却・贈与・担保設定など)する権利
- 共有物全体を用途に従って使用する権利
- 共有物の管理に関する事項に参加する権利
義務:
- 持分に応じて固定資産税などの費用を負担する義務
- 共有物の管理や修繕に必要な費用を持分に応じて負担する義務
- 他の共有者の権利を侵害しない義務
重要なのは、共有者は自分の持分を他の共有者の同意なしに自由に売却できるという点です。民法では、共有者は他の共有者の同意なく持分を処分することができると定められています(民法第206条)。ただし、これには重要な注意点があります。
共有持分を内緒で売る理由と心理的な側面

共有持分を内緒で売りたいと考える理由はさまざまですが、多くの場合、以下のような背景があります。
内緒で売りたくなる一般的な理由
- 共有者との関係悪化:他の共有者と折り合いが悪く、話し合いができない状況。特に相続で発生した共有状態では、相続人同士の関係が複雑になりがちです。
- 金銭的緊急性:急な出費や借金返済などで、すぐにまとまった資金が必要になった場合。
- 将来的な管理の負担回避:高齢化などで将来的に不動産の管理ができなくなる不安がある場合。
- 相続税の支払い:相続税の納付資金を確保するために、相続した共有持分を売却する必要がある場合。
内緒にすることのメリットとデメリット
内緒にすることのメリットは、短期的には「面倒な話し合いや説得の手間を省ける」「自分のペースで売却を進められる」などがあります。
しかし、デメリットはそれを大きく上回ります。「他の共有者との信頼関係が完全に壊れる」「後からトラブルになり法的紛争に発展する可能性」「買主にも迷惑がかかる」「良い条件で売れない可能性が高い」などのデメリットがあります。
心理的な負担と向き合い方
共有持分を内緒で売ることは、心理的な負担も大きいものです。「バレたらどうしよう」という不安や、「正直に話せない」という後ろめたさは、精神的ストレスの原因になります。
この心理的負担を軽減するためには、可能な限り正直に対応し、専門家のサポートを得ながら適切な手続きを踏むことが重要です。たとえ話し合いが難しい相手でも、内緒で進めるよりは何らかの形で通知するほうが、長期的には心理的負担が少なくなるでしょう。
共有持分を内緒で売ることの法的リスク

共有持分を内緒で売ることは、法的には可能ですが、重大なリスクが伴います。ここでは代表的な法的リスクについて解説します。
内緒での売却は法的に可能か?
結論から言えば、共有持分の売却自体は他の共有者の同意がなくても法的に可能です。これは民法第206条に基づくもので、共有者は自分の持分を自由に処分する権利を持っています。
ただし、「内緒で」という部分に注意が必要です。売却そのものは可能でも、新しい共有者が参入することになるため、後々のトラブルの種になりやすいのです。
内緒での売却に伴う主な法的リスク
- 共有物分割請求のリスク:持分を購入した新しい共有者が「共有物分割請求」を行う可能性があります。これにより、不動産を売却して分割するか、現物分割するかの裁判手続きが始まる可能性があります。
- 賃貸収入の分配トラブル:賃貸中の物件の場合、新しい共有者に賃料の一部を支払う必要が生じます。内緒で売却していた場合、過去の未払い賃料の請求を受ける可能性もあります。
- 登記手続きに関するトラブル:内緒で売却すると、登記手続きの際に他の共有者に発覚する可能性が高く、強い反発を招くことがあります。
- 善管注意義務違反の責任:共有物の管理者がいる場合、内緒での持分売却は管理者の善管注意義務違反と見なされる可能性があります。
他の共有者の優先買取権について
日本の民法では、共有持分を売却する際に他の共有者に優先的に買い取る権利(先買権)は明確に定められていません。しかし、実務上は、他の共有者に先に売却の打診をするのが一般的です。
特に、遺産分割協議中の相続財産や、共有者間で優先買取に関する取り決めがある場合は注意が必要です。このような場合に内緒で第三者に売却すると、契約の無効や損害賠償請求のリスクが生じる可能性があります。
売却後に発覚した場合の法的問題
内緒での売却が後から発覚した場合、以下のような法的問題が生じる可能性があります。
- 信頼関係の破綻と法的紛争:他の共有者との信頼関係が完全に破綻し、様々な法的紛争に発展する可能性があります。
- 共有物の管理をめぐるトラブル:新しい共有者の参入により、これまでの管理方法や使用方法が変わる可能性があります。
- 共有物分割請求訴訟:新しい共有者や怒った元の共有者から共有物分割請求訴訟を起こされる可能性があります。
- 損害賠償請求:状況によっては、他の共有者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。
最も重大なリスクは、新しい共有者が「共有物分割請求」を行うことです。この請求により、長年家族で維持してきた不動産が強制的に売却される可能性があります。このリスクを理解せずに安易に持分を売却すると、他の共有者に大きな迷惑をかけることになります。
内緒で売る前に確認すべき重要事項

共有持分を売却する前に、以下の重要事項を確認しておくことが重要です。
共有持分の正確な権利関係の確認方法
まず、自分が本当に売却できる権利を持っているのか確認する必要があります。
- 登記簿謄本の取得:法務局で登記簿謄本(全部事項証明書)を取得し、正確な持分割合と共有者を確認します。費用は1通600円程度です。
- 共有者間の契約書の確認:共有者間で特別な契約や取り決めがないか確認します。優先買取権を定めた契約がある場合は、それに従う必要があります。
- 遺言書の確認:相続で取得した持分の場合、遺言書に特別な指定がないか確認します。
登記簿謄本の見方と確認ポイント
登記簿謄本では、以下の点を特に注意して確認します。
- 共有者全員の氏名と持分割合:表題部と権利部(甲区)で確認できます。
- 抵当権などの担保権設定の有無:権利部(乙区)で確認します。抵当権が設定されている場合、売却が制限される可能性があります。
- その他の権利制限:仮差押えや処分禁止の仮処分などが記載されていないか確認します。
共有物分割請求権について
共有物分割請求権は、共有関係を解消するために認められた重要な権利です。共有者はいつでも共有物の分割を請求できます(民法第256条)。
分割方法には、現物分割(不動産を物理的に分ける)、価格賠償(一部の共有者が他の共有者の持分を買い取る)、換価分割(不動産を売却して代金を分配する)があります。
共有物分割請求は、内緒で持分を購入した第三者が行う可能性が高く、これにより不動産の売却が強制される可能性があることを理解しておく必要があります。
共有者間の取り決めや遺言の確認
共有者間で何らかの取り決めがある場合は、それに反する売却は問題を引き起こす可能性があります。特に以下の点を確認する必要があります。
- 共有物の管理に関する契約:使用方法や収益の分配、管理費用の負担などに関する契約がないか確認します。
- 持分の処分に関する特約:持分を売却する際の手続きや優先買取権に関する特約がないか確認します。
- 遺言での指定:遺言で「共有のまま維持すること」などの指定がある場合は注意が必要です。
これらの確認を怠ると、売却後に思わぬトラブルに発展する可能性があるため、慎重に調査することが重要です。
内緒で売却する際の実践的な手順

もし法的リスクを理解した上でなお内緒で売却を進める場合、以下の手順を参考にしてください。ただし、可能な限り他の共有者に通知することをおすすめします。
信頼できる不動産業者や専門家の選び方
内緒での売却を考えるなら、信頼できる専門家のサポートが不可欠です。
- 不動産業者の選定:共有持分の売買経験が豊富な業者を選びます。一般的な不動産会社では、共有持分の売買に消極的なところも多いため、専門的に扱っている業者を探すことが重要です。
- 弁護士への相談:法的リスクを正確に把握するため、不動産取引に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。初回相談料は30分5,000円〜1万円程度が一般的です。
- 司法書士の選定:登記手続きを行う司法書士も、共有持分の売買経験が豊富な人を選ぶことが重要です。
必要な書類と準備
共有持分を売却するには、以下の書類が必要になります。
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
登記簿謄本(全部事項証明書) | 法務局で取得します。 |
住民票 | 市区町村の窓口で取得します。マイナンバーの記載がないものを取得します。 |
印鑑証明書 | 市区町村の窓口で取得します。 |
固定資産税評価証明書 | 市区町村の税務課で取得します。 |
実印 | 売買契約書に押印する際に必要です。 |
本人確認書類 | 運転免許証やパスポートなど。 |
これらの書類を事前に準備しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
売却価格の適正な決め方
共有持分の売却価格は、単純に不動産価格に持分割合を掛けた金額よりも大幅に安くなるのが一般的です。これは「共有持分の流動性の低さ」や「共有物分割請求のリスク」などが影響するためです。
一般的には、不動産評価額に持分割合を掛けた金額の30〜70%程度になることが多いです。具体的には以下の要素で価格が変動します。
- 建物の状態と築年数:築浅で良好な状態ほど高値になります。
- 立地条件:都心部や駅近などの好立地であれば高値になります。
- 共有者の数と関係性:共有者が少なく、関係が良好なほど高値になります。
- 賃貸中かどうか:安定した賃料収入がある場合は高値になることがあります。
正確な価格を知るには、共有持分の売買を専門に扱う不動産業者に査定を依頼するのが最も確実です。
契約から決済までの流れ
一般的な共有持分売却の流れは以下の通りです。
専門の不動産業者を通じて買主を探します。個人での買主探しは非常に困難です。
買主が見つかったら、売買契約を締結します。この際、弁護士のチェックを受けることをおすすめします。
契約から2週間〜1ヶ月後に決済を行います。売買代金を受け取り、所有権移転登記に必要な書類を買主に引き渡します。
買主側が司法書士に依頼して所有権移転登記を行います。この時点で他の共有者に売却が発覚する可能性が高いため、心の準備をしておく必要があります。
内緒で売却する場合でも、決済前に他の共有者に通知することを検討してください。発覚は時間の問題であり、後から知らされるよりも事前に伝えられる方が、関係悪化を最小限に抑えられる可能性があります。
売却後の対応と発覚時の対処法

売却後は、特に他の共有者への対応が重要になります。
売却後の税金や登記関連の処理
売却後は以下の手続きが必要です。
- 確定申告:売却による譲渡所得がある場合は、確定申告が必要です。譲渡所得は「取得費」「譲渡費用」「特別控除」などを差し引いて計算します。
- 住民税・固定資産税の精算:固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、年の途中で売却した場合は、買主との間で日割り計算による精算が必要になることがあります。
他の共有者に発覚した場合の対応策
売却が発覚した場合の対応は、事前の準備と誠実さが重要です。
- 事実を素直に認める:隠し続けることは状況を悪化させるだけです。事実を認め、理由を誠実に説明しましょう。
- 新しい共有者の情報を提供する:新しい共有者の連絡先や人柄などの情報を共有し、不安を和らげる努力をします。
- 今後の方針を相談する:今後の不動産の管理方法や、必要に応じて残りの持分を買い取る可能性なども含めて話し合います。
トラブルになった場合の解決法
それでもトラブルになった場合の解決法は以下の通りです。
- 話し合いによる解決:まずは当事者同士で話し合いを試みます。
- 調停の利用:話し合いで解決しない場合は、裁判所の調停を利用します。調停は裁判より費用が安く、手続きも簡易です。
- 専門家による仲介:弁護士など第三者の専門家に仲介を依頼する方法もあります。
弁護士相談のタイミングと選び方
以下のような場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
- 他の共有者から訴訟を示唆された場合
- 共有物分割請求を受けた場合
- 損害賠償請求を受けた場合
- 登記手続きに協力を拒否された場合
弁護士を選ぶ際は、不動産取引、特に共有持分のトラブル解決の実績がある弁護士を選ぶことが重要です。法律相談サイトや弁護士会の紹介サービスを利用すると、専門分野で実績のある弁護士を見つけやすくなります。
ケーススタディ:実際の売却事例と教訓

実際の事例から学ぶことで、より具体的な理解が深まります。
成功事例とその要因分析
事例1:事前通知による円満な解決 相続で取得した実家の共有持分(3分の1)を売却することになったAさん。当初は内緒で売却しようと考えていましたが、弁護士のアドバイスにより、売却の1ヶ月前に他の共有者(兄弟)に通知しました。結果的に一方の兄が持分を買い取ることになり、市場価格より高く売却できました。
成功要因:早い段階での情報共有と、専門家を介した冷静な交渉が成功につながりました。
失敗事例から学ぶ教訓
事例2:内緒での売却による共有物分割請求 両親から相続した土地の共有持分(4分の1)を姉に内緒で投資家に売却したBさん。売却から3ヶ月後、投資家から共有物分割請求訴訟が提起され、結果的に土地全体を売却して分配することになりました。姉は実家を守りたかったため、関係は完全に悪化しました。
教訓:内緒での売却は、新たな共有者からの共有物分割請求リスクを高めます。特に投資目的の買主は、分割請求を行う可能性が高いことを理解しておく必要があります。
裁判例から見る法的判断の傾向
共有持分の売却に関する裁判例からは、以下のような傾向が見られます。
- 共有物分割請求は原則認められる:民法第256条に基づき、共有者はいつでも共有物の分割を請求できるとされています。分割方法は裁判所が個別事情を考慮して決定します。
- 共有者間の特約は一定の効力を持つ:共有者間で「持分を売却する際は他の共有者に優先的に買取の機会を与える」などの特約がある場合、この特約に反する売却は債務不履行を構成する可能性があります。
- 悪意的な共有物分割請求は制限される可能性:極めて悪意的な共有物分割請求は権利の濫用として認められないケースもあります。
これらの判例から、共有持分の売却と共有物分割請求は密接に関連しており、内緒での売却は予期せぬ法的リスクを招く可能性が高いことがわかります。
内緒での売却を避けるための代替案

内緒での売却によるリスクを避けるために、以下の代替案を検討してみましょう。
共有者との話し合いの進め方
共有者との話し合いは、以下のポイントを押さえると上手くいく可能性が高まります。
- 感情的にならず、事実ベースで話す:なぜ売却したいのか、客観的な理由を説明します。
- 相手の立場を尊重する:相手の意見や感情にも配慮しながら会話を進めます。
- 複数の選択肢を用意する:「売却」一択ではなく、「買取ってもらう」「一定期間待ってもらう」など複数の選択肢を提示します。
- 専門家を交えた話し合い:必要に応じて、中立的な立場の専門家(弁護士や不動産仲介業者など)を交えて話し合いを行います。
共有持分の分割や買取交渉の方法
他の共有者に持分を買い取ってもらう場合は、以下の点に注意します。
- 適正な価格設定:市場価値をベースに、適正な価格を設定します。第三者への売却よりも高い価格で買い取ってもらえる可能性もあります。
- 分割払いの提案:一括での支払いが難しい場合は、分割払いを提案する方法もあります。
- 専門家の活用:価格交渉や契約書作成には、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
調停や裁判を利用した解決法
話し合いでの解決が難しい場合は、以下の法的手段も検討できます。
- 調停の利用:裁判所の調停制度を利用すると、調停委員が間に入って解決策を模索してくれます。申立費用は数千円程度と比較的安価です。
- 共有物分割請求訴訟:最終手段として、自ら共有物分割請求訴訟を起こす方法もあります。裁判所の判断で分割方法が決定されます。
不動産の共有関係を解消する方法
共有関係そのものを解消する方法も検討できます。
- 現物分割:物理的に不動産を分割できる場合は、各自の単独所有とします。
- 共有物全体の売却:不動産全体を売却して、持分に応じて代金を分配する方法です。
- 受益者負担による買取:不動産から最も利益を得ている共有者が、他の共有者の持分を買い取る方法です。
これらの代替案は、内緒での売却よりも法的リスクが低く、関係悪化も防げる可能性が高いため、優先的に検討することをおすすめします。
まとめと専門家アドバイス

記事の重要ポイントの再確認
この記事で解説した重要ポイントを再確認しておきましょう。
- 共有持分は法的には自由に売却可能:民法上、共有者は自分の持分を他の共有者の同意なく売却できます。
- 内緒での売却には大きなリスクが伴う:特に、新しい共有者からの共有物分割請求により、不動産全体の売却を強いられる可能性があります。
- 事前の確認と準備が重要:登記簿謄本の確認や共有者間の特約の確認など、事前の調査が不可欠です。
- 可能な限り内緒での売却は避ける:法的リスクや人間関係のトラブルを考えると、可能な限り他の共有者に通知する方が賢明です。
- 代替案を検討する価値がある:内緒での売却以外にも、話し合いによる解決や法的手続きを利用した解決など、様々な選択肢があります。
法的リスクを最小限にするための3つの鉄則
共有持分の売却に関わる法的リスクを最小限に抑えるためには、以下の3つの鉄則を守ることが重要です。
- 情報共有の原則:可能な限り早い段階で他の共有者に情報を開示し、説明する。内緒にするほど後々のトラブルは大きくなります。
- 書面化の原則:すべての合意事項や通知は書面で行い、記録として残す。口頭の約束はトラブルの元になります。
- 専門家活用の原則:不動産取引に詳しい弁護士や司法書士、不動産業者など、専門家のアドバイスを積極的に取り入れる。自己判断で進めると思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
これらの原則を守ることで、共有持分売却に伴うリスクを大幅に減らすことができます。特に「内緒にしない」というのが最も重要な原則です。
専門家からの最終アドバイス
不動産取引の専門家からは、以下のようなアドバイスが寄せられています。
「共有持分の売却は、一般的な不動産売却とは異なる注意点がたくさんあります。特に『内緒での売却』は、短期的には楽に見えても、長期的には大きなトラブルを招く可能性が高いものです。可能な限り他の共有者に情報を開示し、話し合いの機会を設けることをおすすめします。それが難しい場合でも、少なくとも売却の事実を通知することで、後々のトラブルを軽減できる可能性があります。」
「また、買主を選ぶ際には、投資目的の買主は共有物分割請求を行う可能性が高いことを理解しておく必要があります。可能であれば、他の共有者と良好な関係を築ける買主を選ぶことも検討してください。」
相談できる専門機関の紹介
共有持分の売却について相談できる主な専門機関は以下の通りです。
- 弁護士会の法律相談センター:各地の弁護士会で法律相談を実施しています。初回30分5,000円程度が一般的です。
- 法テラス(日本司法支援センター):収入に応じて無料相談が利用できます。全国に事務所があり、電話での問い合わせも可能です。
- 司法書士会の相談センター:登記や簡易裁判所での手続きに関する相談ができます。
- 不動産鑑定士協会:共有持分の適正価格について相談できます。
- 不動産コンサルタント:共有持分の売買に詳しいコンサルタントも増えています。
専門機関に相談する際は、事前に資料を整理し、相談内容を明確にすることで、より有益なアドバイスを得ることができます。
今すぐできる3つのアクション
共有持分を売却検討中の方が、今すぐ実行できる具体的なアクションを3つ紹介します。
- 権利関係を正確に把握する:法務局で登記簿謄本を取得し、正確な持分割合と共有者を確認しましょう。費用は1通600円程度です。また、共有者間の契約書や遺言書がある場合は、それらも確認しておきましょう。不明点があれば、司法書士に相談するのがおすすめです。
- 売却理由と希望を整理する:なぜ売却したいのか、いつまでに売却したいのか、希望する売却金額はいくらか、などを書き出してみましょう。感情的な理由ではなく、客観的な理由を整理することで、他の共有者への説明もスムーズになります。
- 専門家に相談する:不動産の共有持分取引に詳しい弁護士や不動産業者に相談してみましょう。初回相談だけでも多くの情報が得られます。無料相談を実施している事務所もあるので、まずは電話で問い合わせてみることをおすすめします。
これら3つのアクションは、いずれも費用をほとんどかけずに実行できるものです。少しの手間をかけるだけで、将来の大きなトラブルを未然に防ぐことができます。共有持分の売却は「備えあれば憂いなし」です。今日からできることから始めてみましょう。
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