こんにちは、城都不動産株式会社の中西です。
突然ですが、あなたは「SNSで紹介されていたマンションが気になって調べた」「TikTokで見た物件が魅力的に見えた」という経験はありませんか?
近年、SNSを活用して情報発信する不動産インフルエンサーが急増しており、特に若い世代を中心に彼らの影響力が強まっています。
YouTubeやTikTok、Instagramといった動画・写真中心のプラットフォームでは、「都心のマンションが月8万円!」「年収400万でも買える!」など、インパクトのある訴求が毎日飛び交っています。
もちろん、中には優良な情報を届けているインフルエンサーも存在します。しかし残念ながら、中には信頼に値しない“商売優先”のアカウントも少なくありません。
今回は、不動産インフルエンサーが使っている巧妙な手口や、SNSを活用した詐欺まがいの誘導、さらにそれに騙されないために知っておくべき重要な知識を、できる限りわかりやすく、かつ具体的にお伝えします。
なぜ今、不動産インフルエンサーが増えているのか?
まずは背景から理解しておきましょう。なぜ今、これほどまでに「不動産×SNS」が盛り上がっているのでしょうか。
今回は週刊現代の記事をもとに解説していきます。
ユーチューブにインスタグラム、それにTikTokといったSNSで「マンション 購入」などと打ち込むと、きらびやかな格好をした男女がスマホの画面上に続々現れ、〈先行きが見通せない時代。若者はいまこそマンションを買おう!〉〈年収が低くても買える良質なマンションがある!〉などと呼びかける。
興味を持って彼らのアカウントを覗くと、そのプロフィール欄には大抵彼らが運営する「会員制サロン」への登録方法が書いてある。こうして若者たちを自分たちの懐に引き込み、囲っていく
「不動産屋の社長や社員、不動産に詳しいと自任する人が、LINEのグループなどを利用して、自分たちのサロンを運営しています。そのグループに入ると『いまオススメなのはこの物件!』『年収400万円でも都心のマンションを買える!』といった惹句とともに、若者でも手が届く手頃な物件情報が共有される。100人を超えるメンバーがいるサロンも登場しています。
週間現代より引用
不動産のSNSが盛り上がっている理由は以下の通りです。
- 情報収集の主流が「ネット検索」から「SNS閲覧」へ移行している
- 若い世代が「人ベース」で情報を信頼する傾向が強くなっている
- 不動産業者もSNS集客が効果的であると気づき始めている
- 写真・動画で魅力を“盛れる”ため、演出次第で物件がよく見える
今や「Googleで物件検索する」よりも、「インスタで物件を見る」時代。特に20〜30代の層は、YouTubeやTikTok経由で住まいを探す人が年々増加しています。
このような中、フォロワー数やバズりやすさを武器に影響力を持つ**“インフルエンサー型の不動産営業”**が続々と登場しているのです。
【実例】SNSで拡がる「LINEグループ型サロン」の勧誘
近年よく見られるのが、LINEや会員制サロンを活用した「囲い込み型」の販売手法です。
SNSで魅力的な物件紹介動画を投稿し、「詳しく知りたい方はLINEへ」「サロンで特別情報を配信中」と誘導するパターン。これは典型的な「ファンを育てて囲い込む」仕組みです。
LINEやサロン内では以下のようなメッセージが飛び交います:
- 「この物件は年収400万円でも購入可能」
- 「今月中に申し込めば仲介手数料無料」
- 「紹介者限定の割引価格をご案内中」
- 「都内で利回り8%以上の投資物件あります」
一見、限定的でお得に見える情報ですが、その情報の真偽や意図は完全に不透明です。
さらに問題なのは、クローズドな場では営業トークがどれだけ“盛られている”のか、外から確認できないという点。
このような構造は、情報商材・投資詐欺・ネットワークビジネスの世界でよく使われるやり方と非常に似ています。
【心理】「ファン化」が引き起こす判断力の麻痺
SNSのアルゴリズムは、「あなたが興味を持ちそうな動画」を次々と流してきます。一度不動産系の動画を見れば、関連する投稿が連続して表示され、知らぬ間に“その世界”に引き込まれていきます。
結果としてこうなります:
- 気づけば同じインフルエンサーの投稿ばかりを見るようになる
- その人の話し方、雰囲気、キャラに親近感が湧いてくる
- 物件の内容より「この人を応援したい」という気持ちが勝る
- 商品(物件)ではなく「人(発信者)」を買ってしまう
これは心理学的にも「親近感効果」や「一貫性の法則」に当てはまる行動で、マーケティング業界では昔から活用されてきたテクニックです。
しかし、不動産は「グッズ」や「投げ銭」ではありません。
何千万という金額を支払う決断を、応援や感情でしてしまうのは極めて危険です。
【技術】写真・動画の「盛りテクニック」に騙されるな
不動産インフルエンサーの中には、動画や写真の「見せ方」に強くこだわっている人も多いです。
具体的な演出例:
- 広角レンズで部屋を2〜3割広く見せる
- 写真の明度・コントラストを調整して明るく爽やかに見せる
- 家具・インテリアを配置して“生活感”を演出
- 窓からの景色や日当たりを都合のいい時間帯だけ撮影
さらに、周辺の環境や実際の立地についても、ネガティブな情報は一切触れず、「駅近」「人気エリア」などポジティブな面だけを強調する傾向があります。
これらは広告業界では「当たり前」の技術ではありますが、物件を判断する側としては、情報が加工されているという前提を持って接することが必要です。
【構造】不動産の売買に潜む「利益の非対称性」
不動産業界の特徴として、「売り手」と「買い手」の情報量に大きな差があります。
不動産業者はプロであり、売りたい物件・利益率が高い物件を中心に紹介してきます。
つまり、彼らがどれだけ「あなたのため」と言っても、実際はこういった力学が働いている可能性が高いのです:
- 利益率の高い物件 → 優先的に紹介される
- 売れ残っている物件 → SNSでバズらせて処理
- 仲介手数料が高い物件 → 押されがち
その中で「本当にあなたに合った物件」かどうかを見極めるには、知識・冷静さ・客観的な視点が不可欠なのです。
【結論】騙されないための具体的な8つの対策
- SNSの情報はあくまで参考にとどめる
- LINEグループやサロンには安易に参加しない
- 物件の内見は必ず自分の目で、昼と夜の2回以上見る
- 契約前に不動産に詳しい第三者(FPなど)に相談する
- 「今だけ」「特別価格」などの急かし文句は無視する
- インフルエンサーの過去の投稿・実績も徹底的に調べる
- 複数の業者や物件を比較して“納得感”を持つ
- 最終判断は「感情」ではなく「データ」と「条件」で行う
【最後に】SNSの波に飲まれず、自分の人生は自分で守
不動産は一生に一度の買い物と言われるほど、人生に大きな影響を与える決断です。
だからこそ、誰が何を言っていようと、最後は自分の目で見て、自分の頭で考えることが何よりも大切です。
インフルエンサーの中には、本当に誠実で有益な情報を発信している方もいます。
しかし、そうではない人が“それっぽい”ことを言っているだけのケースも多いのが現実です。
今後もSNSを活用した営業手法はさらに巧妙になっていくでしょう。
その中で惑わされず、落ち着いて判断できる人こそが、本当にいい物件に出会えるのだと思います。
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