こんにちは、城都不動産の中西です。
今回は不動産業界における個人情報の扱いについて解説します。住宅を探す時、私たちは名前、住所、年収、家族構成など、かなりセンシティブな個人情報を不動産会社に提供しています。
ですが、その情報がどのように管理され、時には取引されているのか、知っている人は少ないのではないでしょうか。そこで今回は個人情報が流出する経緯や、流出しないための対策、万一流出してしまったときの対策について解説していきます。
不動産会社とかかわりがある人だけではなく、個人情報とどう付き合っていけばわかる内容となっていますのでぜひ最後までご参考ください。
個人情報が漏れる原因

個人情報が漏れる原因を事例をもとにお話しします。
① 管理体制の甘さ
社内で顧客情報を無防備に扱っていたり、パスワード設定のないファイル共有など、基本的なセキュリティすら不十分なケースもあります。あまり業界のことを悪くいうのもなんですが、不動産業界は他の業界に比べると飛び抜けてアナログです。
いまだにFAXが現役ですし、ITを使いこなせる人材も非常にすくないです。おそらく電子契約が普及するのはあと500年くらいかかると思います。
不動産会社の事務所の中には顧客情報が記載された書類が事務所内に山積みになっているところも多いです。
ひどいところだと入口から外部の人から見えるところに放置されていたり個人情報を含む書類がシュレッダーなどで適切に廃棄されていないところもあります。
「じゃあデータで管理すればいいじゃないか」という意見もあるかもしれませんが、パスワード保護のないエクセルファイルで顧客リストを管理していたり、退職した従業員のアカウントが削除されずに残されていたりします。
はっきりいって個人情報を守る気がないとさえ思える体制です。
こういった環境が個人情報が漏れる原因になります。
② 業務委託の丸投げ
外注先のセキュリティ体制がずさんで、そこから情報が漏れるケースもあります。
不動産会社の中には、事務作業や顧客管理を外部の業者に任せるところがたくさんあります。
例えば、
- 賃貸契約書類の作成
- 顧客リストのデータ入力
- 空室物件の写真撮影・管理
こういった作業を、コスト削減のために外部業者へアウトソーシングしています。
一見すると効率的に思えますが、ここに大きな落とし穴があります。
委託先のセキュリティ対策が甘いと、情報漏洩のリスクが一気に高まるのです。
たとえば…
- パソコンにウイルス対策ソフトが入っていない
- 社内ネットワークに誰でも簡単にアクセスできる
- 顧客データをUSBメモリなどにコピーして持ち出せる状態
- 委託先のスタッフの教育がされていない
このようなずさんな環境で作業が行われると、悪意のある第三者が簡単に顧客情報を盗み出すことができてしまいます。
しかも、外注先で起きた情報漏洩でも、最終的な責任は「元請けである不動産会社」にあります。
つまり、利用者である私たちには何の落ち度もないのに、被害を受けるリスクがあるというわけです。
実際に、最近発覚した情報漏洩事件の中でも「外注先からの流出」が疑われているケースが少なくありません。
にもかかわらず、委託先の管理をきちんとチェックしていない不動産会社も多いのが実情です。
ただでさえ管理体制が固まっていない不動産会社が委託先に無防備に頼むのは、個人情報をばらまいているようなものです。
③ ノルマ重視の営業文化
売上を優先するあまり、営業担当が顧客リストを盗むようなケースも報告されています。
不動産業界では、営業担当に厳しい売上ノルマが課されているケースがとても多いです。
たとえば…
- 毎月「○件の契約を取れ」と指示される
- 目標に達しないと減給やボーナスカット
- 達成できない社員は社内で評価が下がる
こうしたプレッシャーの中で、営業担当たちは何が何でも契約を取ろうと必死になります。
その結果、どうなるか。
本来であれば守るべき
「顧客情報の適正な取り扱い」
「プライバシーへの配慮」
こういったことが二の次になってしまいます。
具体的には、
- 他店舗や他部門の顧客リストを勝手に持ち出して営業をかける
- 上司から「使えるリストがあれば共有しろ」と指示が出る
- 顧客の同意なしに、外部の業者に情報を渡す
…といった違反行為が、“営業テクニック”の一部として横行してしまう場合もあるのです。
実際の事件:名刺管理サービスへの不正アクセス
ある企業がクラウド上に保有していた膨大な名刺データが不正に閲覧され、投資用マンションの営業リストに転用されていた。実行役として摘発されたのは不動産会社の営業マンたち。
名刺管理サービスは様々な企業が膨大な取引先の名刺データを登録しているもの。
今回の不動産会社の上司は「関係者を名乗ってIDを取る方法もあると思うんだよね」と部下ににおわせ、利用企業からアカウントIDやパスワードといったログイン情報を窃取し、不正にアクセスする手口だった。
男性社員は同年11月、設備工事会社の従業員に対してSansanの担当者をかたったメールを送った。設定の変更に必要な手続きだと説明し、ログイン情報をだまし取る。同様に次長の発言を聞いていた別の営業部社員2人も同じ手口でIDなどを窃取。一連の事件で不正に閲覧された恐れのあるSansanの名刺データは計約400万件に上ったという。
警視庁は23年3月、Sansanや被害企業からの相談を端緒として捜査を始めた。不正アクセスを実行した20代の社員ら5人を24年2〜4月に相次いで不正アクセス禁止法違反容疑で摘発。1人は不起訴となったが、残る4人は罰金刑を受けた。
不動産会社の中にはこうした実態を
「見て見ぬふり」
「結果を出していればOK」
という文化が根強く残っているため、内部から是正されることがほとんどありません。
売上至上主義が個人情報流出の温床になっているのは、間違いないと言えるでしょう。
④見込み客リストは売られている
不動産会社の中には「顧客情報のリスト」を他社と共有したり、名簿業者と取引するケースが存在します。
一部の悪質な業者の間では、「見込み客リスト」という名目で、住宅購入やリフォームを検討している人のリストが取引されています。
例えば:
- 新築マンションの資料請求者リスト
- 住宅ローンの仮審査を通過した人のリスト
- 引っ越し予定のある人のリスト
- 高額物件の内見をした富裕層のリスト
これらのリストは、1件あたり数百円から数千円で取引されているとされています。
ちなみに不動産のドラマで有名な正直不動産でも個人情報を取引してるシーンがあった。
主人公の元上司が名簿業者からワンルームマンション購入者リストを一人1万円を千人分、合計1000万円で買い取るというものです。
ドラマなので、多少脚色されている部分があるので、一人一万という高額な値段でしたが、リストの質や買い手の希望次第ではもしかしたらこのくらいの金額で取引されるケースもあるかもしれません。
ちなみに個人情報で特に価値が高いとされるのは、「購入意欲が高い」「予算が大きい」といった情報が付加されたリストです。こうした情報は、保険会社、リフォーム会社、家具メーカーなど、住宅関連ビジネスにとって「金鉱」のような価値があるのです。
突然、見知らぬ業者からの営業電話がかかってくる。
そんな経験がある人も多いのではないでしょうか?
「でも、それって違法じゃないの?」と思われるかもしれません。実は、個人情報保護法では、本人の同意なく第三者に個人情報を提供することは禁止されています。しかし、同意取得の方法が曖昧だったり、細かい同意書の中に「提携会社への情報提供に同意する」といった文言が隠れていたりするケースが多いので、契約の際は注意が必要です。
個人情報漏洩の対策

ここまで、不動産業界で起きている個人情報流出や見込み客リスト売買の実態をお話ししてきました。
では、私たちはどうやって自分の大切な情報を守ればいいのでしょうか?
今日からできる、具体的な自己防衛策を3つご紹介します。
① 契約前に「個人情報の取扱い方針」を確認する
不動産会社に個人情報を渡すときは、必ず「個人情報保護方針(プライバシーポリシー)」をチェックしましょう。
ポイントはここです。
- 情報の利用目的は明確に書かれているか?
- 第三者に提供する場合は、きちんと説明・同意を求めているか?
- 業務委託先についても管理責任を負う、と記載されているか?
もし、こうした取り扱い方針の説明がなかったり、
「まあ大丈夫ですよ」と口頭だけで済まされたら、要注意です。
特に不動産会社はネットや引っ越し、ウォーターサーバー会社などと業務提携しているところが多いです。
もし個人情報の取り扱いで気になる部分があれば、どういった会社と提携していて、営業電話がかかってくることはあるのか確認しましょう。
② 信頼できる不動産会社を選ぶ
会社選びもとても重要です。
信頼できる会社かどうかを見極めるには、こんな方法があります。
- 会社名で「個人情報流出」「トラブル」と検索してみる
- GoogleやSNSで口コミ・評判をチェックする
- 資本金や従業員数、企業の規模も確認する(悪質な小規模業者を避けるため)
また、しつこい営業電話や断っても連絡が来る会社は、最初から避けたほうが安心です。
③ 不審な連絡が来たら即対応
もしも、
- 見覚えのない不動産会社から突然電話が来た
- 頼んでいない営業資料が郵送されてきた
- あやしいSMSやメールが届いた
こうした場合は、すぐに無視 or 断ることが基本です。
場合によっては、最寄りの消費生活センターや国民生活センターに相談するのも手です。
(→「消費者ホットライン 188(いやや)」で全国共通の相談窓口に繋がります。)
また、不審な業者が個人情報を勝手に取得していた場合は、個人情報保護委員会への通報も検討しましょう。
以上が個人情報の対策についてでした。
個人情報はどれだけ気をつけていても、どこで漏れるかわからないものです。もし身に覚えのないところから営業電話がかかってきたとしても、慌てずにまずは断る姿勢が大切です。
まとめ

今回は、不動産業界で実際に起きている個人情報流出の問題と、その背景、そして私たちができる対策についてお伝えしました。
大切なのは、「不動産会社に渡す情報=資産」であるという意識を持つこと。
情報が当たり前のように取引されてしまう時代だからこそ、ひとりひとりが防衛意識を持つことが重要です。
そして最低限の知識を学んでおくだけでも致命的な失敗を避けることができます。
ちなみに私が経営している城都不動産株式会社では首都圏を中心に不動産事業をしていますので、もしわからないことがあれば概要欄からお気軽にご相談ください。
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